(毎日新聞2011年1月27日より)
東京都内の事業再生コンサルタント、葛西啓次さん(50)が面談した50代の社長は、リーマン・ショック後、事業が赤字転落。消費者金融10社から300万円を借りたが、結局夜逃げをし、妻にも離縁された。葛西さんが昨年末まで交渉し、消費者金融への返済は月30万円から3万円に。銀行は担保である自宅の売却を認め、残りの1500万円の債務の返却を長期化させ、支払額は月1万円にした。「生きる希望が持てました」。社長は涙をぬぐった。
葛西さんは元金融機関の融資のプロ。金融機関は1900年代後半以降、ゼネコンなど大企業の借金棒引きを繰り返した。だが、
中小企業が債務返済をやめれば自己破産。果ては自殺だ」。不動産会社の役員時代も違和感が残り、2年前に転身した。
10年まで13年連続で3万人超の自殺者。理由の2位は「経済・生活問題」だ。葛西さんら金融の専門家が集まるNPO法人「再チャレンジ東京」は借金圧縮や長期化で負債軽減を図る。「借金ごときで命を捨てないで」。心に秘めて、奔走している。
(記者:藤好陽太郎)
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